金融行政方針
金融庁は金融行政が何を目指すのかを明確にするとともに、その実現に向けた方針などを「金融行政方針」として、平成27年から公表しています。
過去の投稿で「事業性評価」や「顧客との共通価値の創造」について当HP上で投稿しましたが、これは金融行政方針に記載してあった文言となります。
個人的に平成29事務年度金融行政方針で気になった点を幾つか記載しておきます。
①P5(2)長期・積立・分散投資の推進『官公庁や民間企業への横展開を視野に、金融庁において職場つみたてNISAを導入』
人は誰しもが老い、いつかは勤めを辞めるときがきます。退職金や年金をしっかりもらえる人や不動産賃貸収入など年金以外の副収入がある人は大丈夫ですが、退職金なし・副収入なし・年金受給年齢の引き上げ及び年金受給金額の減少・社会保障費の負担増など、今後公的年金には頼れない『老後難民』がたくさん出てくる可能性があります。投資信託協会の調べでは、世界の投信残高は1985年から30年間で約28倍にも膨れ上がっています。日本の労働人口減少社会から予想される低成長時代では、老後資産を全然増えない銀行預金ではなく投資信託など自己責任による資産形成により増やしておくという構想も必要になってくると考えられます。若い時からリスクを負ってでも資産運用をしていかなければ十分な老後資産を形成できないかもしれませんし、仮に損失が出たとしても取り返しは可能です。一方高齢になればリスク回避という選択をしてしまう傾向にあるため、税制上も優遇措置がある積立NISA(2018年1月より取引開始、非課税期間は最長20年)を金融庁の職員自ら始めることで、資産形成・資産運用の活性化を率先して図ろうとしているのではないでしょうか?また、P1に記載してある「安定的な資産形成等による国民の厚生の増大 」にも繋げる狙いがあるのではないでしょうか?
②P7(1)持続可能なビジネスモデルの構築『ビジネスモデルの持続可能性等に深刻な課題を抱えている地域金融機関に対し検査を実施し、課題解決に向けた早急な対応を促す』
儲けの出ていない金融機関、顧客の成長と資金需要の創造に動こうとしない金融機関、顧客本位とは名ばかりの金融機関に対して経営改善や合併を促すという意味だと思います。よって、金融機関を取り巻く状況がますます厳しくなって金融再編が進む可能性がありますね。
③ITやフィンテックを活用した金融サービスの向上
ところどころに『IT』や『フィンテック』の記載があります。先月大手銀行がIT化に伴う大幅な人員削減案を発表しましたが、金融庁自ら主導しているため、この流れは今後も続くと思われます。